文章(おじさんだってタピオカドリンクが飲みたいんだ!)

私がライティングゼミ(天狼院書店)において入賞した作品です。

「男に生まれてよかった?」

子供の頃に周りの大人からよく聞かれた質問だ。


正直言うとよくわからなかったが、特別「男」という事で

被害を被った記憶もなかったので、いつも「良かった」と返答していた。

すると大人たちは、なぜか満足そうな顔をしていたのを覚えている。


考えてみると、変な質問である。

以前”女”を経験していて、今が”男”というのならまだ分かる。

当然そんな事はない訳で、両者を比較なんかできないのだ。

その質問は当時の私に対し、今の生活に満足しているかどうかを

確認するためのものだったのだと今では解釈している。

そんな私も今ではいい歳をした大人になった。

男を続けて40歳を超えた普通のおじさんになった。

長く男を続けていると、たまに女性がうらやましくなる時がある。

その一つが、スイーツの飲食に関してだ。


そもそも私は基本的に甘いものが好きなのだ。

今風で言うと「スイーツ男子(スイーツおじさん?)」なのだ。

カフェやケーキ屋さんでスイーツを食べたり買ったりする時、

女性だったら何の抵抗もなく行動できるだろうが、おじさんにはちょっと抵抗があるのだ。

カフェで店員さんに「チョコパフェ下さい!」とは言いづらいのだ。

周りの目を気にしなければいいと言うが、それが結構難しい。

どうしても気になってしまう。

でも、食べたいという欲求には勝てず、どうするか・・・・・・。


そんなこんなで、人知れず自分の中で葛藤をする事がたまにある。

今流行のタピオカドリンクでもそうだ。

今のブームが来る前にはコンビニで時々買って飲んでいたが、

最近流行りの人気店のものはまだ飲んだことがない。

一度は飲んでみたいとは思ってはいるが、そのお店の前に行くと凄い行列ができていて、しかも並んでいるのは若い女性グループと若いカップルしかいない。もう一度先頭から確認してみるが、やはりおじさんは一人もいない。

あれをみると、どうしてもその行列に並ぶ勇気がわかないのだ。


そもそも、”男子が甘みを好きになってはいけないルール”なんてないのだ。

今は「スイーツ男子」という言葉が広まり少しだけハードルは下がったが、

まだまだ日本では”男子がスイーツ好きなのは恥ずかしい事”と言った空気が、

そこかしこに流れている。

昔よく聞いた言葉に「結婚した後、男は外で働き、女は家庭を守る」というのがある。男性は仕事優先で、仕事さえきちんとしていれば、家庭の事は二の次でも良い。

女性は家庭優先で、結婚後は仕事を辞めて、家事と子育てに専念する。

今その様な事を言ったら”時代錯誤”として笑われるだろうが、

それが常識とされていた時代があった。

職場や家庭において”男女平等ではない時代”があったのだ。


かれこれ「男女平等」が叫ばれてから久しい。

今では様々な分野にそれが波及して変化が起きている。

スポーツ界では、男性のスポーツとされていた競技(野球・ラグビーなど)に女性が進出し、一方では女性のスポーツと言われていた競技(新体操・シンクロナイズドスイミングなど)に男性が進出した。

職場では「男女機会均等法」が施行されて以降、男女間の待遇面での差が縮まり、仕事内容やお給料の面において、女性にとっては働きやすい環境が実現してきている。


一方の男性側も、育児休暇の取得率が10年前の3倍を超えるなど徐々に状況は変わってきた。

今はもう、男女の役割を”周りが決めつける時代”ではなくなってきたのだ。

今までの古い固定概念はぶっ壊していい。

女性が牛丼屋やラーメン屋に一人で入って大盛りを頼むことが普通になればいいし、男性がスイーツを食べ歩くことが普通になればいい。

「男性はこうであり、女性はこうである」という固定化された考えから、

「その人自身がどうであるか」にシフトチェンジしていけばいいのだ。

男女差別を語る際、女性側に焦点があたる事が多いが、男性だって苦しんできた。

「男性はこうあるべき」というしがらみによって、自分の欲求を我慢してきた人がいる。スイーツが好きでも”好き”と言えずに我慢してきた人がいる。

今こそ、そのしがらみを解き放とう!


世の中の流れは、確実に私達に味方してくれている。

周りからの好奇な視線ももうすぐ無くなるはずだ。

同世代のスイーツ男子たちよ。今叫ぼう。


「おじさんだって、スイーツが好きなんだ!」

「おじさんだって、タピオカドリンクが飲みたいんだ!」


そして、イメージしよう。

”おじさんたちがタピオカドリンクを手に次々と歩いている様を”

それは悪くない。きっと悪くない。

《終わり》

ポートフォリオ(松熊利明)

これまでに私が作成した作品集(HPや各種ツール類)の一部をご紹介します。 ※内容は随時更新中

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